よくあるご質問
質問へのご回答一覧
真空について
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- 真空とは?
- JISによって「大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態」と定義されています。「真空」とは真の空(カラ)だから何も無いこととしばしば考えられます。これは「絶対真空」と呼ばれ圧力は0(ゼロ)Pa(パスカル)となりますが、未だ確認できていない(実際にはあり得ない)状態で理論上の概念です。例えば、1気圧(105Pa)の空気には1リットル当たり268兆×1億個という途方もない数の分子が含まれていますが、10-11Paという極高真空でも約270万個の数の分子が残っています。いずれにしろ定義上は、平地の2/3気圧程度の富士山頂も約1兆分の1気圧の月面も、同じく「真空」と言われます。
真空ポンプについて
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- 真空ポンプとはどんなものですか?
- 真空ポンプとは、地上である閉じられた空間を、大気圧より低い状態(真空)にするために使われるポンプのことです。現在、多種多様の真空ポンプが市販され稼動していますが、一種類の真空ポンプで大気圧から超高真空の圧力範囲までカバーできるものはまだありません。各々到達可能な圧力や動作上限圧力、排気速度などが異なるので、目的、用途などによって使い分ける必要があります。現在市販されている真空ポンプは、大きく「気体輸送式真空ポンプ」と「気体溜込式真空ポンプ」に分けられます。後者にはクライオポンプ、ゲッターポンプ、ソープションポンプ、スパッタイオンポンプなどがあります。より一般的な「気体輸送式真空ポンプ」は以下のような種類に分類されます。
気体輸送式真空ポンプ 容積移送式真空ポンプ 運動量輸送式真空ポンプ 回転式ポンプ 往復動式ポンプ 流動作動式ポンプ 機械式ポンプ ○油回転真空ポンプ
○キニー式真空ポンプ
○ドライ真空ポンプ
*回転翼型真空ポンプ
*ルーツ型真空ポンプ
*スクロール型真空ポンプ
*スクリュー型真空ポンプ
○ダイアフラム型真空ポンプ
○揺動ピストン型真空ポンプ○油拡散ポンプ
○エジェクタ
*アスピレータ
*蒸気エジェクタ
*油エジェクタ○ターボ分子ポンプ
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- 真空ポンプといっても、大気圧から動かせるタイプとそうじゃないタイプがあると聞きましたが?
- ポンプはスイッチを入れれば動いて、真空ポンプなら排気すると思われがちですし、確かにそういうタイプもあります。しかし真空ポンプによっては、大気圧下で起動させると、負荷によりポンプ内部機構が損傷するとか、封入油が酸化するなどの不具合が発生するタイプがあります。現在一般的に多く使われている各々の真空ポンプについて説明します。
□大気圧下で起動できるタイプ…大気圧から連続して排気でき使い方も簡単です。
・油回転真空ポンプ…0.1~10Pa程度の中真空を得るために最もよく採用されているポンプです。ベルト駆動型と直結型があり使用目的により選択します。排気速度1500L/minクラスまではゲーデ式、それ以上の大型はキニー式となります。
・ドライ真空ポンプ…油や水を使用していない真空ポンプのことですが、一般的には1Pa~10kPa程度の蒸気の無い中・低真空を得るためのポンプを指します。ベーン式、スクロール式、ルーツ式など様々なタイプがあります。
・水封式真空ポンプ…油ではなく水により、真空シール・回転部の潤滑・摺動部の冷却をおこないます。水蒸気や水滴を含んだ気体の排気、吸着・搬送、真空ピンセット、食品・医薬品工業など、低真空域での幅広い用途に対応します。
□大気圧下では起動できないタイプ…上記の真空ポンプによってポンプ内部を規定圧力まで下げた後に起動させます。
大気圧下で起動できるポンプより大きな排気速度、又はより高い真空度が求められる場合に、組み合わせて使用されます。
・メカニカルブースターポンプ…圧力範囲は油回転ポンプよりも狭いのですが、回転子が対称形なので振動が少ないという特長があります。また大きな排気速度が得られ3000m³/h以上の機種も市販されています。
・油拡散ポンプ…エジェクタポンプと同じように、油蒸気が気体分子を捕集することによって排気します。構造が簡単で0.1Pa以下の高真空が容易に得られます。油蒸気の逆流を少なくするためには、水冷バッフルや液体窒素トラップを併用します。
・ターボ分子ポンプ…薄い金属の羽根(ローター)を分子の運動速度程度になるように高速で回転させ、気体分子を低真空域まではじいて圧縮し排気します。油拡散ポンプに比べて清浄な真空が得られますので、特にクリーン度を要求される高真空~超高真空用途で広く用いられています。
油回転真空ポンプについて
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- 1段式と2段式ってなにが違うんですか?
- シリンダー・ローター・ベーン・スプリング等、吸入・圧縮・排気する機構が1セットのタイプを1段式、2セット組み込まれているタイプを2段式と称します(ゲーデ式の回転翼型の場合)。それぞれに以下の特長があります。
2段式:第1シリンダーで圧縮排気した後、第2シリンダーでさらに吸入圧縮排気しますので、より高い真空度が得られる方式です。出来るだけ低い到達圧力が求められる用途に向いています。
1段式:得られる真空度は2段式に比べ低いが、圧縮率が低いことにより耐久性に優れた方式です。また、比較的高い圧力範囲(低真空域)での連続運転でも壊れにくいタイプです。
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- 油回転真空ポンプのベルト駆動型と直結型の違いを教えてください。
- モーターの回転をポンプローターに伝える方式の違いで、ベルトによるタイプをベルト駆動型、カップリングによるタイプを直結型と称しています。それぞれに以下の特長があります。
ベルト駆動型
プーリーによって電動機の回転を毎分600回転まで減速して、Vベルトでポンプに伝達しています。ベルト駆動型には以下のメリットがあります。
□架台を選択できる
ポンプ本体部と電動機・架台が別個なので、レイアウトの自由度が高い。弊社では、横型・縦型などの4タイプを用意しています。また、ポンプ本体部の損傷が甚だしい場合に、ポンプ丸ごと新品交換ではなく、ポンプ本体部のみを新品交換する(電動機・架台は再利用)という修理対応が可能です。
□構造が簡素で耐久性が高い
ポンプの回転数が低いので、ポンプ摺動部や電動機にかかる負荷が小さい。また発熱も小さく油量も比較的多いので、熱による劣化も少ない。さらに部品数も少ないことなどにより耐久性に優れています。
直結型
カップリングを用いて電動機の回転をポンプローターに伝達しています。直結型には 以下のメリットがあります。
□小型で軽量
電動機の回転数を減速せずに伝達しているので、同排気速度のベルト駆動型に比べ小型であり、重量も軽い。
□ダストの発生が少ない
Vベルト・プーリーからの摩耗粉の発生がないので、ダスト発生が少なくなります。
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- ベルト駆動型油回転真空ポンプはロックしにくいってホント?
- ホントです。直結型と比較して、ベルト駆動型はロックしにくい、といえます。
有機合成ラボなどの用途において、油回転真空ポンプがロックする一番の原因は、
焼き付きによるものです。
「焼き付きって?」…ローターや軸部分に、劣化したオイルや吸引したガスがスラッジとして堆積し、ロックすること。
「どうしたら防げるの?」…ロックのもととなる水分や有機溶剤などが入らないように、ポンプの手前でコールドトラップなどにより回収する。 でも、全部は回収出来ない、多かれ少なかれ入ってしまう。
「オイル交換?まめにやっているけど」
あとは、定期的にオイルを交換する。…
「どうして?」ベルト駆動型!
…[油量が多い]:直結型の2倍以上
!混入したアルコール等での劣化の影響が少ない
!温度上昇が少ない…[回転が遅い]:直結型の半分
ということは…熱酸化による焼き付きを起こしにくい!
!摺動部の温度上昇が少ない
だからベルト駆動型は、ロックしにくい!!といえます。
ご参考… ポンプ本体の比較:直結型とベルト型
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- ベルト駆動型油回転真空ポンプの型式だけど、USWとかTSTとかBとかPとかいろいろでよくわからないんですが?
- ベルトにより動力を伝達する、回転翼型のベルト駆動型ポンプの特長のひとつに、ポンプ本体部がモーターなど他の構成部品から独立したユニットとなっていることが挙げられます。これにより、ポンプ本体とモーターが横型だけでなく縦型にも組むことが出来、架台と組合せて数種類の特長あるバリエーションが可能となります。弊社ではさらにポンプ本体部の方式と組合わせてシリーズ化しています。型式名について以下にて説明いたします。
4種類の頭文字(U,T,B,P)と、続く2種類の2文字(SW,ST)で構成されています。
□頭文字はポンプのかっこうを表しています。
U:平台据置タイプ(装置への組込にも適した万能タイプ)
T:キャスター付4脚架台タイプ(キャスター付で移動もスムーズ)
B:キャスター付4脚ボックスタイプ(スマートな外観とより高まった安全性)
P:ポータブルタイプ(持ち運びに便利)
無:ポンプ本体のみ(本体のみの交換修理可)
□後ろの2文字はポンプ本体部の方式を表しています。
SW:2段式
ST:1段式
□以上の2つの要素の組合せにより以下の型式名となります。USW 2段式の平台据置 UST 1段式の平台据置 TSW 2段式のキャスター付4脚架台 TST 1段式のキャスター付4脚架台 BSW 2段式のキャスター付4脚ボックス BST 1段式のキャスター付4脚ボックス PSW 2段式のポータブル PST 1段式のポータブル SW 2段式のポンプ本体 ST 1段式のポンプ本体 ご不明な点は弊社営業までお問合せください。
油回転真空ポンプのご利用について
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- 油回転真空ポンプの排気口から煙が出ますが大丈夫?
- 新品ポンプ使用のはじめから出るのであれば、異常ではありません。油回転真空ポンプ特有の性質として、吸気ガスにポンプ内油が同伴飛沫して排気口から油煙となって出ます。特に圧力が大気圧に近い領域(=大気圧~約100Pa)での運転時には多く出ます。その場合は、油煙キャッチ用フィルター(オイルミストトラップ)を排気口に取り付けてください。 なお、今まで使用されていて油煙が出なかったのに急に出始めたという場合は、配管部のリーク、オイルミストトラップエレメントの目詰まり、またはポンプ内部品の摩耗・劣化・欠損等が考えられます。リークのチェック、エレメントなど部品の交換等の対応が必要となります。また、ポンプの修理が必要となる場合がありますので、弊社までご相談ください。
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- 真空ポンプの油は交換する必要があるのですか?
- 真空ポンプ内で圧縮されることにより液化した吸引ガスはポンプ室内に溜まり、油を酸化・炭化・低粘度化することにより劣化させます。また、蒸気圧の高いガスは再蒸発し真空度を低下させます。さらに、以下のような要因によっても油は劣化します。
□高温ガスの吸引。
□腐食性ガスの吸引。
□結晶化するガスの吸引。
□粉塵の吸引。
□大気圧に近い(~100Pa)圧力での連続運転。
以上、経時的な要因を含め油は劣化しますし、放置すれば真空ポンプの腐食・劣化・性能低下に至る恐れもありますので、定期的なオイル交換が必要となります。
なお弊社では、水分の吸引による油の劣化に対応する「オイルクリーナー」を販売しております。詳細は弊社営業までお問合せ願います。
真空計について
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- ブルドン管真空計は他の真空計に比べてかなり安いが、精度はどうなんですか?
- ブルドン管真空計は、大気圧を基準にしたゲージ圧表示ですが、大気圧自体は標高の高低や天気(高気圧・低気圧)によって変動しますので、正確な真空度は得られません。富士山頂でも海岸でも、晴れていても台風でも(圧力が違うのに)、針は常に目盛上の基準値0(ゼロ)を指します。同じ真空ポンプでも、標高・天気によって異なった性能(到達圧力)を表示する場合がありますので注意を要します。このように正確性には多少欠ける面がありますが、安価というメリットと測定範囲などの特性をいかし、目安計としてご利用されるのが妥当と思われます。
なお、大気圧~200Paくらいの低真空域の圧力を正確に測定するには、弊社のパルミル真空計が適しています。詳細は弊社営業までお問合せください。
